日本人のボランティア通訳の方は、形式的な業務として、俺っちにUK政府が決定した「入国拒否」の現実を突き付けた後、静かに個室を出て行った。
期待していた結果とは裏腹に全く状況は改善されず、むしろトドメを刺された感じだった。
そうそう、この通訳の方との面会するちょっと前に、必要であれば留置場横に設置されたペイフォン(公衆電話)を使用して外へ電話をする事を許可された。それを知ったのは留置されてから約17時間経過してからだった。
もちろん自腹での通話になるので一銭も所持してないければ電話を掛ける事は出来ない。
財布に中にあった日本円の1万円札を50ポンドに両替して貰い。
そこから日本出国時に見送ってくれた親友にTELした。そして留置場にぶち込まれている事を報告。さぞ彼もビックリした事だろう。なんせ自分自身ですらこの状況をまだ把握できず、シッカリと直視できてなかったからね。もう笑うしかないw
日本の親友にも、この後に日本人通訳者が面会に来る事を伝えておいた。
そのメシア(救世主)となる通訳者に最後の希望を託すだけだった。
結果、何の助けにもならなんだが。。。。(T_T)
そして、自分がロンドンに入国できない事が判った以上、今ここでやれる最善の事をやろうと頭のスイッチを切り替えた。
通訳と面会する前には、あえて韓国人彼女には電話をしなかった。
その時はまだ彼女の存在を隠す必要があったし、まだ彼女をドッキリさせる企画を諦めていなかったからだ。
が、入国拒否され、強制送還が決定した以上、せめて自分がロンドンにいる事は伝えたかった。
ただ気になったのはセキュリティーが電話の内容を聞ける直ぐ側に座っていた事だった。
もちろん俺っちとその韓国人との共通語は英語だった。
否応なしに会話は筒抜けだったはず、しかし俺っち自身、既に開き直っていたし、素直に一刻も早く、彼女の声が聞きたかった。
「プルルルー プルルルー プルルルー ・・・」
「ガチャ、Hello~」
彼女に繋がった。
「Hi Honey, 俺、俺だよ。」
「どうしたの?こんな時間にいきなり? 今ちょうど学校が終わって帰ってる所だよ。」
本当ならその帰り道で俺っちが花束持って、校門で待っているシナリオだったのに。。。(-_-;)
「実は俺っち、今ロンドンに来てるんだ・・・」
「えぇ!? 何を言ってるの? チンチャ~?(本当に?)」
「本当だよ・・・」
「あ、そう言えば着信元が国際電話からじゃなかった。 えっ!?まさか私に会いに来てくれたの? キャッキャ、キャッキャ♪」
電話越しでも彼女が喜んでる感じが伝わって来た。
「Come here, I’m waiting for you~( 待ってるから、早く私に会いに来て~!)」
「・・・・・・」俺は、言葉に詰まった。。。
「No, can not…I can’t see you….(できない。。お前に会えないんだよ。)」
「実は今、勘違いからロンドン・ヒースロー空港の留置場のようなトコに入れられている。ほんで、今しがた俺の入国拒否が決定し、日本へ強制送還される事になった。」
最初、それを聞いた彼女の反応は、俺っちが冗談を言ってるもんだと思っていたようだった。
しかし、その彼女も段々こっちが真面目に言ってる事に気づき、現状を把握した。そして、その韓国彼女に言われた事!
「あんたバカ!?(You’re so stupid!! )」
キツい一言だった。(>_<)
「何で現地の知り合いで私の名前を言わなかったのよ!何で私にロンドンに来る事を前もって言わなかったのよ!そうしたら私が空港まで出迎えに来れてたのに!!」
「いや。。。Honey… お前をビックリさせようと。。。」
こんな感じに⇒「w(゚o゚)w オオー! 」
「はー(ため息)、私をビックリさせようとしたおかげで、入国拒否されたあなたにもっとビックリやわ!」と彼女は厳しく返す。
クシュンってな感じで、返す言葉がなかった。。。(T_T)
いや、むしろそこまでボロクソに言ってくれる彼女だからこそ好きになったのかもしれん。。。
電話越しでの説教中、公衆電話が切れる直前の「ブー」って音が聞こえ、とりあえず
「I will call you back before I leave here if I have a chance.(ロンドンを出国する前にチャンスがあれば、後でもう一度電話を掛け直すよ。)」
と言って電話を切った。
電話を切った後、無性に彼女に会いたくなった。
けど、そんな彼女に会えない歯がゆさから今回の元凶を作ったイミグレオフィサーに対して本気に殺意さえ覚えた。
To be continued…
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